民泊問題と管理規約の改正
こんにちは。 六法法律事務所の弁護士池田泰介です。
このホームページのコラムでは、マンション管理で最近話題になっていることや日常的な問題まで幅広く取り上げていきます。
コラムの第1回目は、東京、大阪、京都、名古屋など全国各地で話題となっている「民泊」と「民泊新法」を踏まえた管理規約の改正について取り上げます。
自分が住んでいるマンションの一室で民泊が行われているかもしれないと考えたことはありますか?都心部で観光地からほど近い場所に位置するマンションは、特に旅行者にとって人気が高いため、管理組合に無許可のまま民泊を行っていることもあります。
今年6月に成立した民泊新法(正式名称は住宅宿泊事業法)は、報道によると来年6月末にも施行される見込みです。この民泊新法は、これまで旅館業法上の許可が必要だった民泊を全国的に解禁し、都道府県や政令指定都市などに届け出をすれば、年間180日以内の民泊営業を実施できることとなります。
これまで、民泊営業も旅館業法上の許可が必要で無許可民泊営業は、刑事罰の対象でしたし、住宅専用マンションと管理規約で明記された一室で宿泊業を営めば、当然に規約違反であると解釈されていました。しかし、この民泊新法が施行されれば、法律に従って届け出をすれば合法的に民泊営業が出来ることになります。
そのため、民泊を認めないのであれば管理規約で明記すべきですし、民泊を認めるとしても、どの範囲で認めるかを明記することが必要不可欠でしょう。
今年8月29日に民泊新法の成立を踏まえて国交省標準管理規約が改正されました。その改正箇条文のコメントでも、「住宅宿泊事業法第2条第3項に規定する住宅宿泊事業については、規約で、可能か禁止かを明記することが望ましい」と明記されています。
自宅にあるマンションの管理規約を引っ張り出してみて下さい。
住宅専用マンションの場合、管理規約の最初のほうの条文に、
第●条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
と定められていると思います。
管理組合として民泊を認めない場合、遅くとも民泊新法施行までに、最低限、改正標準管理規約を参考にして、以下のように管理規約を改正する対応をとる必要があります。
第●条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない。
逆に民泊を認める場合には、民泊新法や条例に沿って認める範囲を管理規約で明記するとともに、使用細則も整える必要があるでしょう。
ただ、全面的に管理規約で禁止する条文を修正したとしても、賃貸借を装って民泊行為に及ぶ危険が除去できるわけではありません。グレーなケースに対応するため、民泊行為を出来るだけ防止・発見できる方策についても検討しなければならない場合もあります。
民泊問題については、民泊新法と今後定められる政令・省令・各市町村特別区の条例をふまえて、それぞれのマンションの用途に沿った規約や細則を整備していかなければなりません。
今後もこのコラムでは、民泊に関する法令動向や問題点を随時取り上げていきたいと思います。
弁護士 池 田 泰 介