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マンション敷地の用地買収の問題

 公共事業や道路拡張で土地の一部が買収の対象となることが決定されたため、土地や建物などの補償がなされることがあります。

 用地買収事案で契約によって補償金を受け取る場合の手続の流れは以下の通りです。

 分譲マンションで土地が区分所有者全員の共有となっている敷地の一部が、用地買収の対象となった場合には、戸建ての場合と異なり特有の問題点があります。

 例えば、上の図のように、一つの敷地に1棟のマンションが建っているとします。このマンションの住戸は北棟、東棟、西棟の3つに内部でわかれていて、敷地の西側には駐車場、駐輪場が存在するとしましょう。そして、入り口に面した建物から独立した正面玄関部分(共用部分)があり、玄関内にはロビーや管理人室があるとします。

 このようなマンションの敷地の一部(黄色の部分)が公共事業によって収用対象となった場合について、区分所有者が個別の売買契約をするまでに管理組合が行わなければならない手続を説明します。

 

① 敷地の分筆(建物敷地変更の特別決議)

 用地対象を特定するために、対象部分の土地とマンションの敷地として残る部分の土地を分割する登記(土地の分筆)が必要です。そこで、用地対象となる敷地部分について、建物が建っている部分と分筆する特別決議(建物敷地変更の特別決議)を行います(平成29年3月23日法務省通達参照)。

② 敷地利用権の分離処分禁止を解除する管理規約改定

 総会特別決議で、専有部分と敷地利用権の分離処分を禁止を解除する管理規約を改定します(区分所有法22条1項但書参照)。分割請求及び単独処分の禁止を定めた規約条文の3項に「○○番の○○の土地(分筆された土地の地番)は建物の各専有部分と分離して処分することができるものとする」

 ①と②の特別決議が可決されると区分所有者は、専有部分とは別に分筆された敷地の共有持分の売買契約を個別に締結することができます。用地を取得する側は、持分売買契約に応じない区分所有者に対してのみ持分収用の手続をとることとなります。

 

 次に、赤色の部分が用地買収対象の場合の問題点をあげます。黄色の部分は建物が建っていない敷地と建物から独立した共用部の一部分が用地対象範囲でした。しかし、赤字の場合、用地対象範囲が建物にかかっているので専有部分を含めた建物の移転除去が必要となります。建物の除去が必要なため補償の範囲が特に複雑です。

 マンションは構造上一棟の堅固建物として建設されていますから、その一部だけを切り取り移転除去することが可能かどうかが大きな問題となります。建物の構造上その一部を切り取ることが可能なのか、工事の難易度、残存部分の構造計算上の安全性、残った建物の電気や昇降設備など機能面に与える影響、建築基準法の適合性を考慮します(区分所有建物敷地取得補償実施要領12条参照)。 

 赤色の部分は北棟の3分の1程度が用地対象となっています。北棟が左右に南に延びた箇所(西棟、東棟)と構造上切り離しができるのかどうか、可能であるとしても北棟全体を取り壊すこととなるのかが検討対象となるでしょう。

 北棟を東西に約3分の1にわたり切断除去するため北棟の維持が構造上困難な場合、北棟の区分所有権全部と敷地共有持分が売却対象(補償対象)となります。他の棟は残されることとなりますが、取壊しが予定される北棟の敷地部分の分筆範囲(売却範囲)や、残される建物部分の共用部分の補償、経済的損害の補償などの問題が検討課題となります。