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最高裁判例【理事会選任の理事長は理事会で解任が可能】

こんにちは。六法法律事務所弁護士池田泰介です。本年もよろしくお願いいたします。

 今日は、昨年末に出された、最高裁判例を紹介します。

 平成29年12月18日、マンション管理組合の理事会が管理組合の理事長が解任できるかどうかについて、最高裁判所が「解任できる」という初めての判断を出しました。

 裁判になった管理組合の規約には、理事長の解任手続についての特に規定が設けられていませんでした。これは国交省の標準管理規約も同様です。標準管理規約は、理事長を「理事の互選により選任する」と規定されているだけで、解任については、特に規定がありません。一方で、区分所有法25条1項では、「規約に別段の定めがない限り、集会決議によって、管理者(=理事長)を選任又は解任できる」と規定されています。原審の福岡高等裁判所は、これを重視し、理事長の解任について本件管理規約で特に定められていないことや、本件管理規約上、理事の解任が総会決議事項とされていることを理由に、理事会で理事長を解任できないと判断しました。

 最高裁は、区分所有法25条1項が,集会(=総会)の決議以外の方法による理事長の解任を認めるか否かと、その方法を規約に委ねていることを前提に、本件管理規約で「理事長が理事の互選によって理事長を選任する」としていることは、裏を返せば理事会が選任した理事の解任も認める趣旨と解釈でき、そのような解釈が、組合員の合理的意思に合致するというべきと判断しました。そして、理事会が選任した理事長は、理事会が解任できるという初めての判断を出しました。

 管理規約で、理事長職の選任を理事会に委ねたのであれば、いかに管理規約に明言されていなくとも、その解任もまた、理事会に委ねていると解釈する最高裁判例の考え方は、管理組合の実務機関というべき理事会制度の趣旨に合致していると考えられます。一方で、理事会内の力関係の変更や種々の思惑によって、組合の代表者である理事長が都度に変わることともなりかねないという不安定さも危惧されるところです。ただ、この点においては、そもそも理事長は会社の代表取締役のような広範な業務執行権限がなく、あくまで規約と理事会や総会決議に基づいて限られた範囲で組合の業務を代表して執行する人であり、実務機関の理事会が理事長を解任する権限を有していたとしても、そのことだけによって管理組合の運営が極めて不安定になるとか、組合員に大きな不利益が生じるということは非常に少ないのではないでしょうか。

 いずれにしても、標準管理規約は、多くのマンション管理組合が規約作成の参考にしているため、かなりの多くの管理組合の規約において、「理事長解任」の規定が特に設けられていないと思われます。その場合、理事会が理事長を選任すると規定されていれば、解任も理事会が可能という帰結となります。理事長職の安定性を重視するならば、「総会決議による」という規約改正が必要となります。

 お住まいのマンションの管理規約を確認し、理事長の選任と、解任についてどのような規定となっているか、確認されてはいかがでしょうか。

                                              弁護士 池 田 泰 介