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新型コロナウイルス感染症と管理組合総会

1 総会開催の時期について

 新型コロナウイルス感染症が拡大し、組合員の安全確保や会場が確保できないなど従前通りの時期に通常総会が開催ができなくなることが今後大いに想定されます。

 区分所有法では、毎年1回一定の時期に集会(総会)を招集しなければならないとされ(34条1項),集会では毎年1回一定の時期にその事務に関する報告をしなければならないとされていますが(第43条),前回開催から1年以内招集や事務報告を求めているわけではありません。 
 そのため,区分所有法では,前年の集会の開催から1年以内の開催は必須ではなく,感染症問題がおさまってきた後の本年中に通常総会を招集し,総会で必要な報告をすれば足りることとなります。

 ただ、管理規約で総会開催時期が「会計年度終了日まで」や毎年4月というように具体的に規定されている場合、管理規約との整合性の問題は残されます。しかし今回のような危険性の高い感染症や大地震発生等の天変地異がおこり開催不可能と判断される場合延期をすることも一つの選択肢と考えられます。

2 通常総会を延期する場合

(1)役員はいつまで職務を続けるのかについて

 管理規約の「任期」の規定に従います。多くのマンションの管理規約には「任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するまでの間引き続きその職務を行う」書かれているはずです(標準管理規約36条3項参照)。そのため、総会が開かれて新役員が選任されるまで、今の役員が職務を続けることとなります。

 もしもこのような規定がなかったとしても、管理組合と役員は委任契約の関係にありますからいずれにしても後任役員が選任されるまで職務上の義務が存続すると考えるべきです。

(2)次年度予算承認が遅れる点について

 お住まいのマンションが標準管理規約を参考につくられたものであれば、総会で収支予算案が承認される前までの経常経費の支出や、やむを得ない支出を許容する規定(標準管理規約58条)があります。また理事長による緊急時の共用部の保存行為を認める規定(21条6項)もありますから、総会延期による予算承認が遅れの不都合はそれほど生じないと考えられます。

 もしお住まいのマンションの管理規約にこのような暫定的な支出を想定した条文がなかった場合でも、区分所有法20条1項や18条1項但書を根拠として経常経費の支出や共用部の保存行為については可能と考えられます。また予備費で当面対応することもあえます。

(3)管理委託契約の更新が予定されている場合

  変更契約を行う場合重要事項説明会の開催が法令で義務づけられていますが、これまでと同一条件で暫定的に契約を締結し次回総会時まで重要事項説明会を開催せずに契約更新をおこなうことで対応することができます。(令和2年2月27日に公表された一般社団法人マンション管理業協会「感染症等流行時におけるマンション管理業務におけるガイドライン」参照)。

3 通常総会や臨時総会を開催する場合

 役員は、議案書冒頭やマンション内掲示板で、各区分所有者が議決権行使書や委任状によって対応可能であることを積極的に周知して総会開催を実施することがよいでしょう。

 なお、総会を開催するには議長のほかに議事録署名人2人の最低でも3人が出席することは必要です。

 

 この時期にどのように総会を開催すべきかどうかは、管理組合の規模、居住地域の状況、適切な開催場所の確保、議案の緊急性、想定される議事進行時間を考慮しつつ、①開催を延期する、あるいは②優先度の高い必要最低限の議案可決にとどめる、あるいは③書面による議決権行使を周知徹底させて通常通りの開催を選択することとなるでしょう。