東京のマンション管理に関する問題解決なら六法法律事務所

お問い合わせ電話番号:03-3234-5900 受付時間:月曜~金曜 9:00-18:00

管理組合の総会で出された動議の取扱いについて

 総会で議案審議中に出席者が緊急動議として新たな議案を出す場合や、修正議案を出す場合があります。

 これらについてどのように取り扱うべきかについて説明をします。

1 議案の目的と無関係な新たな議案を動議として出された場合

 設例1 臨時総会で大規模修繕の件について審議中に、反対派住民が役員解任動議を出す

 区分所有法37条1項は「集会においては、招集通知によってあらかじめ通知した事項のみ決議することができる」と規定します。よって、動議内容が普通決議事項かつ管理規約で動議について定めている場合(37条2項)と組合員が全員同意して招集通知を省略した総会である場合(37条3項)を除いて、設例1のような通知された「会議の目的」と無関係な議案を決議をすることはできません。

 議長は、管理規約が動議を認めていなければ、取り扱わずに審議を進める必要があります。

 なお総会のときに区分所有者全員が出席していて、その場で全員の同意が得られれば、に準じて事前に通知されていない議案の決議も可能となります。ただ出席者のなかに委任状による代理人が含まれている場合、原則として「全区分所有者が出席している」とみなすことはできません。委任状は事前に通知された事項のみ議決権行使を委任していると考えるべきだからです。ただし、個別具体的に考えると、持参した委任状の記載事項から新たな議案の議決権行使も委任していると読み取れる場合には全区分所有者が出席しているとみなすことができる場合もありそうです。しかし、のちに手続瑕疵を原因として総会決議無効のリスクを考えると、この考え方は極力さけるべきでしょう。

2 議案の目的と関連する修正動議がだされた場合

設例2 新役員選任議案を審議中に招集通知の候補者に書かれていない組合員を候補者に加える修正動議が出された場合

設例3 「ペット全面飼育禁止」の管理規約を「猫に限って飼育を可とする」と変更する議案の審議中に「〇センチ以下であれば猫だけでなく犬も飼育を可とする」内容に修正動議が出された場合

 区分所有法は、「35条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができる」と定めています。そして第35条1項は、「招集の通知は会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない」、5項は「第1項の通知をする場合、会議の目的たる事項が特別決議事項の場合、その議案の要領をも通知しなければならない」と規定します。

 設例2設例3のような修正動議は、設例1と違って招集通知に掲げられ審議中の議案内容の一部を修正または変更するものなので、審議事項と関連します。そのため、修正動議が認められるかについては、設例1よりも個別具体的な判断が必要となります。

 まず、設例2は普通決議事案なので、区分所有法では会議の目的の事項が通知されていれば足ります。よって、同一議案であるかぎり修正動議が認められます。つまり、招集通知に記載された候補者ではない組合員を総会で役員候補者に加えて賛否の決議をとることができます。この修正動議を招集通知に書かれていないことだけを理由として拒否できないこととなります(なお設例2については修正動議を認めることができるかどうかという問題のほかに管理規約で立候補を認めているかどうかの問題も別途あります)。

 一方、設例3のような特別決議議案の場合、区分所有法35条5項は「議案の要領」の通知も義務付けています。議案の要領とは、決議する内容についての要約です。設例3でいえば、会議の目的は『管理規約のペット禁止規定の改定の件』、議案の要領は、『猫に限って飼育可とする』といった改定規約案です特別決議事項の場合、修正動議は通知された議案の要領とも実質的にみて同一でなければなりません。そのため、普通決議事項に比べてかなり修正動議が認められづらいといえます。

 設例3は、猫のみ飼育可とする議案要領を、猫だけでなく小型犬も飼育可とする議案要領に修正しています。議案要領の核心ともいえる飼育可能な動物の対象を増やして変更していますから、あらかじめ示された議案の要領と実質的に同一といえません。この修正動議に応じて規約変更決議をすることはできません。

 なお、普通決議事項であっても、議案の要領を通知書に記載する場合もあります。その場合でも、議案の目的と同じであれば議案の要領と異なっていても修正動議を取り扱えます。たとえば設例2は、招集通知書に候補者の名前が掲げられていれば議案の要領まで書かれているとみなされますが、特別決議事項ではありませんから、役員改選の集会目的の範囲である以上、修正動議は適法な議案の提案です(東京地裁平成29年1月27日判決参照)。