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区分所有法が定める専有部分と共用部分の説明

1 専有部分とは

1 専有部分であるためには構造上の独立性と利用上の独立性が必要

 一般的な管理規約には、専有部分の定義を「区分所有法第2条第3項の専有部分をいう」、共用部分の定義を「区分所有法第2条第4項の共用部分をいう」とだけ書かれています。そのため、専有部分や共有部分の定義と内容を理解するためには区分所有法の規定とその解釈を確認しなければなりません。

 区分所有法1条は、『一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して、住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときはその各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる』と規定しています。この個別的な所有権を「区分所有権」といい(2条1項)、区分所有権の目的たる建物の部分を「専有部分とよびます(2条3項)。

 区分所有法は、専有部分の成立要件として、①構造上の独立性と、②利用上の独立性が必要としています。

 について、周囲の全てが完全に遮断されていなくても、隔壁や階層等によって他の部分と遮断され、その範囲が明確であれば構造上の独立性が認められます。

 利用上の独立性とは、独立して建物の用途として供することができることをいいます。建物の用途は、住居に限られず事務所や集会場でも構いません。一方、エレベーター室(エレベーターが上下する建物の部分)や廊下、階段室は区分所有者の共用に供されることが予定されていますから専有部分になりえません。また、利用上の独立性が認められるためには直接に外部と通じている出入り口がなくてはならず、たとえば階下の部屋を通らないとその建物の外に出ることができない屋上に増築された小屋も独立した専有部分とはなりえません。

2 他の部分と遮断された区画内に共用設備がある場合

 マンション内の構造上独立性がある区画内に共用設備がある場合に利用上の独立性があるかどうかが最も問題となります。

 この点について判例は構造上独立性を有している車庫の内部に共用設備(マンホールと排気管)がある事例で、利用上の独立性が認められるためには、共用設備が小部分を占めるにとどまること【共用設備の小規模性】その余の部分で独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができること【建物部分の排他的利用可能性】他の区分所有者らによる共用設備の利用、管理によってその排他的使用に格別の制限や障害を生じず、反面この使用によって共用設備の保存や他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合【建物部分と共用部分の利用・管理が相互に影響を及ぼさず支障とならない】としています。

2 共用部分とは

 共用部分とは区分建物の各所有者の共用に供される部分をいい、区分所有法では以下の通り⑴から⑶の通りに分類されます。

3 専有部分の境界(範囲)

 専有部分の境界(範囲)について、標準管理規約7条2項は、専有部分の範囲と共用部分の範囲を以下のように具体的に列挙して区別しています。標準管理規約は、専有部分の範囲について『上塗り説』をとります。『上塗り説』とは壁・天井・床・柱・梁などの「躯体部分」はすべて共用部分であり、その上塗り部分や内装部分は専有部分になるとする考え方です。管理規約が上塗り説をとっている場合、専有部分の所有者は、躯体は自由に改造できませんが、壁紙張り替えなどの内装工事は自由に行えます。また、専有部分の範囲は、管理組合が共用部分の損保契約を締結する際に付保される保険対象範囲にもかかわってきます。

 標準管理規約(専有部分の範囲)
 第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
  2 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
   一  天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
   二  玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
   三  窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする
  3  第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。

4 専有部分か共用部分か

 建物の各部分が専有部分か共用部分かについて争われるものについて以下列挙していきます。

1 配管、排水設備

 排水管の老朽化した場合の取替費用に負担や漏水事故があったときの責任負担とからんで、配管や排水設備が専有部分なのか共用部分かが問題となります。

 この点については2019年4月5日の記事もあわせてご参照ください。http://xn--xck0d2a9bc0414hnel.com/2019/04/05/114/

2 管理人室(管理室)

 まず機械室、電気室は建物全体の維持管理に必要不可欠であり、他の用途に供されることもないから利用上の独立性が認められませんので、法定共用部分です。

 管理人室は、登記実務上、以下の通りに分類されます。

 ① 内部に各専有部分を集中管理する消防設備、警報装置などの恒常的な共用設備を有し、かつ受付窓口もつき、常時来訪者、配達物の処理が可能であるが、管理人の寝起きする空間を備えていないもの・・・共用部分

 ② トイレ、風呂、玄関など管理人が居宅として使用し、あわせて管理事務を処理しているが、共用設備が世知されておらず、受付窓口の構造をもっていないもの・・・専有部分(規約で共用部分とすることは可能)

 ③ ①と②の混合型・・・主たる部分が①をとるときは①と同様に共用部分として扱い、重要部分を②が占める場合には②に準じて専有部分として扱う

 しかし管理人室が共用部か専有部分かについては、特に①か②で峻別することができない③の混合型の場合が多く、設備など外観上の要素だけではなく、管理室の利用実態やマンションの居住生活における管理室のもつ重要性といった実質面も考慮して共用部か専有部分かが決せされます。

 判例(最高裁平成 5年 2月12日)は、マンションの区分所有者らが共有持分権を根拠として、「管理室」を専有部分とする所有権保存登記の抹消登記請求と、明渡し請求を求めた事案で以下の通り判示しました。

 「事務室」の特徴は下記ののとおりです。最高裁は、1⃣マンションの規模が比較的大きく居宅の専有部分が大部分を占めているから、区分所有者の居住生活を円滑にし、その環境の維持保全を図るために、その業務にあたる管理人を常駐させ、多岐にわたる管理業務の遂行に当たらせる必要があるというべきであるところ、2⃣本件マンションの玄関に接する共用部分である管理事務室のみでは、管理人を常駐させてその業務を適切かつ円滑に遂行させることが困難であり本件管理人室は管理事務室と合わせて一体として利用することが予定されていたものというべきであり、両室は機能的にこれを分離することができないことを理由に利用上の独立性を否定し、専有部分であることを否定しました。

 室内の間取りや共用設備がないことからすると専有部分と判断されそうですが(一審は専有部分と判断)、マンションの規模を前提として、争点となった管理室が実際に果たす機能や争いなく共用部とされた管理人室との関係性を重視して共用部分であるとの妥当な結論を導きました。