理事の辞退と協力金の徴収
1 理事(役員)の辞退は可能か
管理組合の理事(役員)選任方法について輪番制(あるいは抽選制)をとっている場合、自分の順番が回ってきたとき、役員の辞退をすることができるのでしょうか。
管理組合と役員との法律関係は、委任契約であり(区分所有法28条参照)、管理組合が総会決議によって選任し、その候補者が承諾することによってはじめて役員の地位を得ることとなります。
そのため、総会で選任しても役員候補者に拒絶されてしまうと委任契約が成立していないとみなさることとなります。要するに法律的には辞退が可能という結論です。
2 役員辞退は不可とする(就任を強制する)規約は可能か
たとえば、
『組合員は、総会による役員選任を拒絶してはならない』とか『各組合員は、輪番制によって役員選任をあらかじめ承諾する』との規約を定めた場合、もはや辞退ができなくなるのでしょうか。
管理規約のなかにこのような条項があっても直ちに無効とまではいいきれないと考えますが、あくまで委任契約が有効に成立するためには、申込と承諾が必要なのであって、このような規約条項や総会決議があるからといって承諾がなされたものと法的にみなすことはできません。あくまで選任された者の承諾が必要なのです。
3 規約で役員辞退者に協力金(辞退金)を課すことは可能か
住民間の公平性確保や安易な辞退を許さないために規約や細則で、辞退者に協力金(辞退金)を徴収する定めをおいている管理組合があります。
このような協力金規定をおくことも、協力金額が過大でなければ可能であると考えられています。ただし、協力金がどの程度までならば過大でないといえるかは個別に判断され、明確な基準はないのでかなり難しい問題です。ただ、辞退した役員任期中に限って月額数千円程度の負担金を支払わせる程度であれば過大とはいえないでしょう。
規約例は、以下の通りです。
規約例1 管理費関連の条文を修正
第〇〇条 区分所有者は、敷地及び共用部分等の管理に要する経費にあてるため、次の費用を納入しなければならない。
一 管理費 二 修繕積立金 三 組合活動協力金
〇項 住民活動協力金については,役員に就任しない所有者の場合に負担するものとする。ただし,病気・ケガ等やむを得ない理由があり理事会の承認を得た場合には除外とする。
* 金額は管理費などと同様に総会決議で定める。
規約例2 役員選任規定の条文を修正
〇〇条〇項 理事及び監事は、組合員のうちから、別に定める輪番表に従い総会で選任する。
〇項 組合員は、役員就任を辞退する場合、管理組合に対し役員選任細則に定める役員辞退金を支払わなければならない。
* 役員選任細則内で金額、辞退する場合の手続、辞退金支払が免除されるケースについて定める
役員辞退金の定めは、組合員間の不公平を少しでも是正する点では有益といえます。ただし、役員辞退者の増加に歯止めをかけることができるかといえば、お金を払えば堂々と辞退ができることにもなりかねず、歯止めにはならない可能性も想定されるところです。
協力金(辞退金)を定めることが役員の成り手を確保する手段としてどこまで有益といえるかについてはマンションごとに吟味する必要があります。逆に役員報酬規程を設ける、あるいは役員人数を見直す、役員資格を拡大する、あるいは理事会の運営方法を改善するといった方法等もあわせて検討することが重要でしょう。