管理組合による不動産取得(建物の取得)
管理組合が、マンション内の専有部分を取得する場合、たとえば、ある組合員から集会場確保の目的で専有部分を購入する場合にはどのような手続をとる必要があるでしょうか。
管理組合は不動産売買契約を締結できますが、法人化していなければ管理組合名義での登記ができません。また、管理組合の肩書をつけた理事長名義(例えば 『〇〇マンション管理組合 理事長鈴木一郎 』)での登記もできないこととされています。
そこで、不動産を取得する場合、これを機会に管理組合法人の設立をするか、あるいは法人化しないまま不動産を購入するかいずれかの選択をすることとなります。
1 管理組合法人を設立する
(1)設立方法
法人の設立のためには特別決議(区分所有者およびその議決権の各4分の3以上の多数)の可決を要します。具体的には、「法人となる旨」「法人の名称」「事務所所在地」について特別決議で可決し、それに加えて「管理組合法人管理規約の改正」を承認する特別決議と、「法人化後の理事及び監事の選任」する決議が必要です。
法人名義の移転登記が可能となることで不動産が組合の財産であることが第三者から見て明らかになります。また銀行から代金の融資を受ける場合も手続きが進みやすくなることもメリットといえます。
(2)設立後の売買手続
総会特別決議を経て、管理組合法人が不動産を締結します。代金決済し、管理組合法人名義の所有権移転登記申請をします。
2 管理組合法人を設立しない場合
総会特別決議を経て不動産売買を進めることとなりますが、購入後の登記名義は、組合員全員の共有登記か、理事長(または管理者等)の肩書なしの個人名義のいずれかを選択しなければなりません。
登記名義を組合員全員の共有登記を行うことは、多数の組合員がいるマンションや団地の場合、移転登記のために一人一人から実印付き委任状や印鑑登録証明書をもらわなければならず、事実上不可能な場合が多いといえます。
その場合、理事長個人の名義で登記申請を行うこととなります。
理事長個人の資産ではありませんから、理事長がするたびに「委任の終了」を原因として、所有権移転登記をしなければなりません。そのため、定期的に手間と登記費用が発生します。
3 規約共用登記の対応
2で、説明したとおり、管理組合法人を設立せず建物内の専有部分を取得する場合、理事長個人の名義で登記する方法をとることとなります。
取得した専有部分を集会場として使用する、は第三者に賃貸するなど、将来にわたり管理組合が使用し管理する予定である場合には、規約共用部分として登記をすることで管理組合の所有であることを登記上明示する対応が考えられます。
これによって、理事長変更の都度、登記上の所有権者の名義を変更する手間と費用をかける必要がなくなります。
4 購入資金を修繕積立金から支出できるか
管理規約には修繕積立金を取り崩すことができる場合を規定しています。
そして、たとえば標準管理規約28条1項5号では、
『その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理』のために、取り崩すことができると定められています。
購入目的、その後の使途の内容、組合の修繕計画に支障をきたすか否かなどによって支出の可否が決められるでしょう。