管理組合の役員選任
こんにちは。弁護士池田泰介です。
本日は、管理組合の役員選任(選出)について、このコラムで取り上げます。
役員の選出手続として、輪番、立候補、推薦、抽選などがありますが、皆様のマンションの管理規約はどの方法を定めていますか?複数の選任手続を併用しているケースも多いと思います。
輪番制は、最も多く採用されている選出手続であり、多数のマンションが、輪番制又は輪番制と立候補制の併用をとっています。実際の数値をご紹介します。
平成25年度マンション総合調査結果(国交省平成26年4月23日公表)によると、昭和44年から平成6年までに建築されたマンションは、輪番制を採用している割合が65%前後です。一方平成6年以降に建築されたマンションはいずれも80%を上回り、平成22年以降のマンションは86.7%の高数値となっています。輪番制は、マンションの所有者等が順々に役員になるため、全員が平等・均等に役員の負担を分担することになりますし、管理組合運営の透明性確保や活性化の点でもメリットが大きいため、特に築年数の浅い分譲マンションの管理規約には最初から輪番制を定めていることが多いのでしょう。
一方、マンションの戸数(規模)で見た場合、1戸~500戸までの規模のマンションは、いずれも70%前後か70%を超える割合で輪番制を採用しているのに対し、501戸以上の超大型マンションは57.5%にとどまっていることが特徴的です。超大型マンションは、近年盛んに建築されていますが、輪番制採用が少ない理由は、役員の定員が多く定められているため理事会の形骸化や専横化の危険が少ないこと、管理会社からの管理サポートが充実していること、輪番に代わる「抽選」を立候補とともに併用していることが多いことなどが考えられます。
以下の図表は、国交省マンション総合調査結果の数値から、立候補制と輪番制の数値を引用したものです(複数回答可のアンケート結果であるため複数の手続を併用している場合も数値に含まれます。)
もしも、管理規約に定めた役員の選任手続を変更したい場合、総会で管理規約あるいは役員選任細則の改正しなければなりません。
以前、立候補制と輪番制を併用しているマンションについて、規約の立候補制を廃止する件についての相談を受けたことがありました。
立候補制は、意欲がある住民が役員となるのですから、理事会の活性化に繋がるメリットがあります。また、任期満了後も再任されることが適当な場合や、管理組合に専門的な知識が要求される案件を抱えている場合に当該専門的知見を有すると自負する住民がタイムリーに役員になれるなどのメリットがあげられます。
一方で、立候補者ばかりが役員に占められれば、一部の住民による管理組合の専横化や理事会の不透明化の懸念、運営に無関心な住民の増加といったデメリットも考えられます。
私個人としては、立候補制・輪番制の併用パターンをとっているマンションにおいて、立候補制のメリットを捨てて、輪番制のみをとるメリットがあまりないように考えます。
もしも、不当・不法な目的、あるいは役員として不適切な人間が立候補した場合(例えば、組合との間で現在進行形で訴訟を抱えている当事者)を懸念されているならば、立候補=役員決定ではなく、最終的には総会の場での多数決により決せられるわけですから、総会選任決議のとき否決をすれば足ります。
また、予め役員の欠格事由を規約で明示的に定めておくことによっても、不測の事態に対処することが可能です。
ただ相談をうけたマンションは、最終的には、住民の皆さんが平等に役員を経験することがマンションの活性化に繋がる点を重視し、総会で立候補制を廃止する規約に改正されたようです。
マンションの内部自治は、一般論だけでは量れない面があります。一般論としてのメリット・デメリットをふまえたうえで「居住するこのマンションでは、どうすることがベターなのか」という点を考えたうえでの総会や理事会の結論であることが重要でしょう。
弁護士 池田泰介